ブログ

  • 投稿日時:2023/05/25
    医師免許ってオールマイティーです。私は医師免許を持ってますから、明日から脳外科になりますと言って患者の頭蓋骨にドリルで穴を開けて脳に電気メスを入れても、法的には違法じゃありません。でもそんなこと普通やらないでしょう?心臓外科だって呼吸器の内視鏡だって、充分な知識を得、かつ経験を積まなければやりませんよね。


    なのに何故あなたは漢方薬はツムラの講習会に出ると処方出来ると思うのですか?私はそれが不思議でしょうがない。


    脳外科は極端な例だろうというなら、同じアジア伝統医学の鍼灸を例にしましょう。医師免許があれば、鍼を打てます。それは、そもそも鍼灸師の免許を規定した法律に「医師で無いものが鍼を打つ時には云々」と書かれているからです。つまり医師であれば問答無用に鍼を打っていいのです。


    では今あなたにセイリンの一番鍼を渡して「この患者は鍼の適応があるから鍼を打ちなさい」と言われたら打てますか?打てないでしょう。あなたは経絡も経穴も知らないし経絡弁証も知らない。何にも分からないのに患者に鍼なんて打てない。


    それってとても正常な感覚です。あらゆる治療行為は、その治療について理論を学び、経験を積み、効果と有害事象を知ってから行うべきです。それが分かっているからこそ、あなたはたった一本の鍼も打てないわけです。


    なのに何故あなたは漢方薬となると、途端にツムラの勉強会に出ただけで患者に飲ませられると思ってしまうのでしょうか?私はそれが不思議でしかたが無い。あなたは葛根湯に含まれている生薬が何かも知らない。一つの処方の中で生薬同士がどの様な役割を果たしているかも分からない。しかも生薬にはどの様な副作用があるかも知らない。


    それでいったいどうしてあなたは漢方薬が処方出来るのですか?


    それはおかしいのです。完全に間違っています(岩田健太郎風に)。葛根湯という処方をみて、これは傷寒太陽病傷寒に使う処方であって、葛根は清熱作用を持ち、麻黄と桂枝は辛温解表であり風邪を除き、芍薬は営気を補い、生姜、大棗は補助として脾気を補うのだと分からないのに、何故あなたは風邪に葛根湯が使えるのでしょうか。さらに桂枝は湿疹を生じることがあり、麻黄はエフェドリンやシュードエフェドリンによる血圧上昇、頻脈、甚だしければ幻覚を起こしうると知らないのに、何故あなたは風邪の患者に葛根湯を出せるのですか?


    おかしいでしょう。あなたのやっていることは、あなたが突然ドリルで患者の頭に穴を開けるのと同じです。そういうことは、やっちゃいけないんです。他の分野なら非常識だと分かるのに、何故漢方だけあなたの頭は途端にイージーになってしまうのでしょうか。


    漢方が分からなければ、使ってはいけません。脳疾患疑いの患者を脳外科や神経内科に送るように、漢方の適応が考えられる患者は漢方内科に送って下さい。餅は餅屋というのは、非常に重要なのです。



    あゆみ野クリニック、漢方オンライン診療やってます。あゆみ野クリニックでクリック!
  • 投稿日時:2023/05/25

    当院の煎じ薬治療は保険がききます。それでも薬剤師の調剤料や宅配料など実費分がどうしても一月数千円発生します。保険がきく薬代は自己負担一ヶ月2,3千円ですが、その他に実費が6千円ぐらいかかるという事です。


    しかし当院は煎じ薬治療に拘ります。漢方薬には煎じ薬と一般の医療機関で広く使われるエキス剤(粉の漢方)がありますが、エキス剤の効果は煎じ薬のほぼ半分です。例え生薬の量が同じでも、効果は半分になります。


    その上、当院の煎じ薬で使う生薬の量は、一般のエキス剤よりかなり多くなります。これは当院が中医学(中国伝統医学)をベースにしているからです。例えば桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)という処方がありますが、ツムラのエキスでは一日分に含まれる生薬の量が薏苡仁10g、桂皮4g、芍薬4g、桃仁4g, 茯苓4g, 牡丹皮4gとなっています。当院の煎じ薬では、患者さんの体調にもよりますが、薏苡仁30g、桂皮、芍薬、桃仁、茯苓、牡丹皮は全て9gが基本です。薏苡仁は利水薬と言って身体の余計な水を抜くというのですが、これはハトムギです。ハトムギを一日10g煮て飲んだって薬として効くとは思えません。どうしても30gとか、そういう量が必要です。


    更に煎じ薬では、ベースとなる処方はありますが、そこに患者さんの病状に応じて生薬を加減します。例えばある患者さんには上の処方に更に当帰6gを入れるとか、蒼朮、沢瀉を加えるとかです。エキス剤はそうした自由な出し入れは出来ないので何か他の処方と合わせるという事になりますが、そうすると不要な生薬まで入ってきてしまいます。エキス剤に足し算はあっても引き算はないのです。

     

    当院は漢方診療としてはあくまで専門医療をやっていますので、上に述べた色々な理由から、煎じ薬治療を基本にしております。


     

PAGE TOP