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  • 投稿日時:2023/06/09

    先日血圧の薬をもらいに来た人が、
    「ちょっと場違いかも知れませんが」というのです。「どうしました」と聞いたら「こちらでは水虫の薬を出していただくことは出来ますか」ですって。


    「そりゃもちろんですよ。ここは内科とは言っていますが、歯の詰め物を間違って飲んじゃった人とか、農作業で虫に刺された人とか、いろんな人が来ますよ」と言ったら患者さんは笑い出して、
    「そう言って戴けると安心です」と言って降圧剤と水虫の薬の処方箋を持って帰っていった。その後ろ姿に「あ、ただし虫歯は別ですよ。虫歯は歯医者さんね」と声を掛けたらその人はおほほ、と笑ってお帰りになりました。

    あゆみ野クリニックは幾つもの顔を持ちます。その一つ、オンライン漢方診療は全国でもえり抜きの漢方専門診療をしていると自負しています。オンライン漢方診療と銘打っているところはいくつかありますが、そのほとんどはツムラなどのエキス剤治療です。エキスは所詮エキスであり、結局「それなり」でしかありません。当院のオンライン漢方診療は佐橋佳朗先生という現代随一の目利きが選んだ生薬を使った煎じ薬治療であり、エキスとはまるで効果が違います。

    しかしあゆみ野クリニックのリアル外来はあくまで石巻の「町のお医者さん」です。ウチは内科ですから水虫は皮膚科に行って下さいなんて事は言いません。水虫でも虫刺されでも何でも診ます。もちろん見て分からないものは専門医に廻します。眼底を見て緑内障や白内障を見つけるのは眼科医であって私ではありません。でも高齢者が「最近目がかすむ」と訴えるのをきいて眼科に紹介するのは私です。町医者って、そう言うものでなくてはならないと思っています。

    あ、でも虫歯は歯医者さんですからね。

  • 投稿日時:2023/06/03

    この投稿は関係者ご家族の了解を得ています。

     


    あゆみ野クリニックには「老年内科」があります。割と多い患者さんは物忘れで認知症を心配してくる人です。そういう人の診断を付けて治療するなり、介護保険のルートに乗せるのは大事な仕事です。

     


    しかし時に「老年内科救急」というケースがあります。

     


    ある非常に高齢の方の娘さんが「最近父の具合が悪いんです」と御本人を当院に連れてこられました。御本人は数ヶ月前に当院の発熱外来に受診され、コロナと診断しましたが、その後の経過は訊いていませんでした。今回伺った限りではその時は当院が出した漢方薬で重症化せず回復したそうです。

     


    しかし最近どうも元気がない、むくんでいる、胸が苦しいと訴えるという事で、当院を受診されました。実はその方は血圧などで別のクリニックに掛かっておられたのですが、何故かご家族は当院に連れてこられました。
    歩くのもやっとというその方をどうにか院内に入れて色々検査したらかなりな心不全です。胸水も溜まっており、そりゃあ胸が苦しいでしょうという感じです。


    さてどうしましょうという事になりました。その方は非常な高齢です。しかしご家族としては「出来ればもう少し長生きしてくれれば」と仰います。そうであれば、これは救急病院搬送になります。石巻なら日赤でしょう。助けるとあればそうなります。


    しかし私はご家族にこうお話ししました。
    「日赤に搬送するという事は、治療しろという事です。となれば点滴が付いて酸素が付いて、おしっこの管が付きます。それで本人が外そうとすれば両手拘束ですし、それでも騒げば抗精神病薬で鎮静となります。それでも救命を希望されるという事であれば・・・?」

     


    ご家族(娘さん)はしばし考えた上で「それはしないことにします」と言われました。まあ御本人は年齢は明示しませんが「極めてご高齢」ですから、それは忍びない、と言うことがご理解戴けたようです。

     


    その方は施設に入居しておられたので、事がそう決まればただちに各方面を動かさなければなりません。施設には娘さんから「施設看取りになります」と伝えてもらいました。施設長は「警察沙汰になるんじゃないか」と相当驚いたようですが、たまたまご家族がその辺の情報をお持ちだったので、在宅訪問診療にすれば警察沙汰にはならないという事を説明し、ご納得戴きました。それと同時に私はその地区の訪看センターに話を繋ぎ「明日から訪問看護をお願いします」と言いました。訪看センターも驚いたようですが、そこはプロなので、これこれこう言う人ですと説明したら理解していただき、すぐに動いてくれました。私が訪問看護指示書を出すのと同時に訪問看護が実施されました。

     


    重症心不全で呼吸不全がありますから、在宅酸素が必要です。私は在宅酸素の業者に電話し、「今日から開始する。指示書は明日書くから今日ただちに本人の居る施設に器具を届けてくれ」と依頼し、業者はその通り素早く動いてくれました。

     


    そうやってまずは臨時往診、次いで訪問診療の契約を結び、施設の管理者に改めて医者の私から「訪問診療をやりますので警察沙汰にはなりません」と説明して安心して貰い、看取りの算段も付けました。


    失礼ないいかたになるかもしれませんが、その方のかかりつけの内科ではこのような動きは取れなかったと思います。仮に心不全と診断しても、型どおり日赤に送ったかも知れません。

     


    これは「老年科救急」です。救命救急とは違いますが、今その高齢な人にとって何がベストかをとっさに判断し、家族に素早く合意を取り付け、訪問診療によるターミナルケアのシステムをその日の内に作り上げました。もちろん、関係各所がそれに応じて迅速に動いてくれたから出来たのですが。


    こういうことをやるのが「老年科医」なのです。あゆみ野クリニック老年内科は時にこう言う素早い仕事をします。高齢者医療だからのんびり構えていていいわけではありません。迅速な対応が必要なことがあるのです。一日でターミナルケアの体制を作って訪問診療に移行するということが求められます。これからしばらく毎晩枕元にスマホを置いて寝ることになりますが、それは致し方ありません。私の本職ですので。

  • 投稿日時:2023/06/02

    ある障害を自覚してショックを受けた若い人に。

     


    あなたの障害は、診断はついても治らないかもしれません。しかし障害を持っているということは、あなたの大きな強みです。障害があったりマイノリティであったりする人は、自然にそういう他人のことを理解することができます。「自分は健康で優秀で何も問題がない」という人は、かえって大きな迷惑なのです。あなたの障害は、あなたの一生の財産です。

     


    処方は特になし。

  • 投稿日時:2023/05/30

    先週あゆみ野クリニックオンライン漢方外来に掛かってくださった80代女性。冷え症で受診されていますが、八味地黄丸でご本人曰く「もうすっかりよい」。しかし同席された息子さんの話では「まだいっぱい着込んでいる」と。するとすかさずご本人「風邪引いちゃいけないと思うからねえ」。アルツハイマーに特有な「取り繕い」もこうなると堂に入っています。

     


    この季節のお年寄りの冷え症治療は、神経を使います。宮城県はGW辺りから、爽やかな初夏の季節が訪れるのですが、梅雨入り前、つまり6月ぐらいから湿った冷たい空気が流れ込み、梅雨明けまでかなり肌寒くなります。日本には四季があると言いますが、宮城県は五季なのです。春が来て、5月に初夏を迎えたかと思うと梅雨寒に移行し、それが開けると途端に猛暑になり、8月の仙台七夕が終わる頃になるともう秋の風が入り込み出します。今は丁度爽やかな初夏から梅雨寒に移り書ける頃なので、「さて天気がどっちに転ぶか」で冷え症の薬を調節しなければなりません。

     


    お天気や季節で治療が変わるってのは、西洋医学ではちょっときいたことが無いです。確かに降圧剤のアムロジンはほてる人がいますが、だからと言って高血圧の人に冬はアムロジンを出し、夏はカンデサルタンを出すという治療はないです。糖尿病でも高コレステロール血症でも、季節の移ろいには関係ありません。


    しかし高齢者の冷え症は、この季節の移ろいを正確に読まないといけないのです。読む必要があるのです。


    あゆみ野クリニックオンライン漢方診療は基本煎じ薬なのですが、この方には今あえてツムラの八味地黄丸を出しています。ツムラの八味地黄丸の利点は、たいして効かないことです。この「暑くなるのか寒くなるのか微妙」な時期に、効き目の強い煎じ薬で八味地黄丸など出すと、お年寄りには強すぎます。それを出して季節がそのまま暑くなってしまうと、熱中症になりかねません。たまたまそのオンライン診療をした日はまさに半袖がぴったりの暑さの初夏の日でしたので、私はよっぽどこの辺で八味地黄丸は止めて六味丸か清暑益気湯に替えようかと思ったのですが、待てよ、そう言えば明日からまた天気が崩れるとか予報が言っていたよな、と思いだしてツムラの八味地黄丸一日2回一回一包のままにしました。そうしたら私の勘は見事に当たって、翌日から私ですらちょっと肌寒さを感じる天気になったので、やれやれ、処方を変えなくてよかったと思いました。これでしばらく梅雨寒の時期を過ごして貰い、梅雨が明けたらすかさず清暑益気湯に変えていかなくてはいけません。そのタイミングを誤ると熱中症になってしまいます。

     


    もちろん、季節の移ろいは地方によって違うでしょうから、その土地の季節の巡りに合わせて治療すべきです。宮城の私の治療をそのまま真似してもダメです。ともかく基本は「真冬の本気で寒い時は当院なら「煎じ薬の八味丸で附子多め、当帰追加」となりますが、エキス剤しか使えないのなら「八味地黄丸と当帰四逆加生姜湯を合わせる」。春になって桜が咲いたら八味地黄丸だけにする。この桜が咲くって言う目安は便利です。だって桜の開花は地方によって違いますから、九州と北海道で何時を目安にするかと言えば、「桜が咲いたら」にすればよいのです。そうしたら何処の土地でも薬の減らし時を間違えなくて済みます。

     


    初夏にかなり暑くなる西の地域では、いったん冷えの治療はお休みすべきです。幾らお年寄りが冷えると言ってもです。高齢者は温度感覚がずれているのはよく知られている事実ですので、あまり患者の訴えだけに引きずられてはいけません。一方北海道から東北のように初夏でも風はまだどこか肌寒い、あるいはそこから梅雨寒が始まるという土地ではあまり効かないツムラの八味地黄丸を敢えて選択し、一日二包ぐらいでやります。

     


    梅雨はジメジメと蒸し暑い地域と梅雨寒の地域とで治療が変わります。蒸し暑い地域では、お年寄りが幾ら寒いと言っても八味地黄丸のような温熱剤は止めるべきです。エキスなら清暑益気湯にしたら良いです。「清暑益気湯」という処方は歴史上有名なものが2つあるのですが、ツムラの清暑益気湯は医学六要という本が原典で、ほとんど潤い作用のある生薬が入っていません。麦門冬と当帰、それに人参がちょっと。麦門冬と当帰以外は基本的に胃腸薬ですから、食欲が失せる蒸し暑い梅雨には丁度良いでしょう。

     


    本当の真夏になったら、白虎加人参湯にします。これはまさに冷やして潤す薬です。真夏の熱中症を避けるにはエキスの清暑益気湯ではダメで、白虎加人参湯で無ければなりません。

     


    こうやってその土地その土地の季節の移ろいに合わせて治療を替える。如何にも漢方ですねえ。
     

  • 投稿日時:2023/05/27

    更年期障害の女性が漢方外来に来ました。その人は精神科に行って、補中益気湯を出されたそうです。私は仰天しましたが「その先生はなんだと言ってあなたにこの薬を出したの?」と訊きました、そうしたら、「元気が出る薬だと言われた」そうです。

     


    確かに補中益気湯は、元気がない人にのませて元気が出ることがあります。しかしその人は更年期障害で、全体に体が火照っていました。補中益気湯は元気がなくて身体にエネルギーが足りないので体が冷える人に使います。更年期障害で身体が火照る人に補中益気湯を飲ませたのでは大変です。飲めば飲むほど火照ります。

     


    漢方を知らない医者が出す漢方薬ってこう言うものです。何事も、餅は餅屋なのです。漢方を知らない医者が漢方を出したら、当院のオンライン漢方診療に掛かってください。いや、マジで。

  • 投稿日時:2023/05/26

    女川原発の下請けの作業員が健診に来ます。その健診で何か異常があるとクビになるのです。つまり職員の健康管理のための健診ではなく、「不良品」を除くための健診です。そこまでは以前から知っていました。

     

    今日新たに、その健診がなんと作業員の自腹だということを知って、さすがに「どこまで悪辣な連中なんだ!」とクリニックで声を大きくしてしまいました。「不良品」を弾くためだけの健診を、まさか当人の自腹でやらせているとは!東北電力本社のお偉方は至れり尽くせりの人間ドックなんでしょう。原発現場で働く下請けは自腹で自分の不良品チェックをやらされているのです。東北電力だって、その事実を知らないわけではないでしょう。知らん顔をしているのだと思います。

     


    碌でもないわ。

  • 投稿日時:2023/05/26

    あゆみ野クリニックの1番の売りは漢方内科だが、診療科に、「内科」というのもある。それって何してるの?と言われたら、「何でもしてます」という事になる。

     


    例えば昨日は農作業をしていたらなんだか分からない虫に刺されて腫れてきたが、皮膚科に電話したら休診だった、と言うので「じゃあすぐ来て下さい」と言った。来てみたら、発熱はない、頭痛はない。私が恐れたのは、ツツガムシ病だったのだ。この辺の農家では、時々ツツガムシにやられる。テトラサイクリン系の抗生物質を投与しなければいけない。しかし私は皮膚科ではないから、ツツガムシに刺された本物の患者を見たのは数例しかない。ないが、他の虫に刺されたのなら、まあ、言い方は悪いが「どうでもいい」のである。命に別状はないし、適当に軟膏を出しておけば治る。しかしツツガムシはそうは行かない。必ずテトラサイクリン系の抗生物質を投与しなければならない。

     


    来た患者の患部を診ると、なんとも判断しがたい。中央に虫が刺した穴があって、その周り1センチが黒ずんでいる。ツツガムシ病の急性期に特徴的とされる頭痛や発熱はない。

     


    しかし刺されたのは数十分前で、まだ一時間経っていないという。とすると、頭痛や発熱が起きていないこともあるだろう。えーい、ままよと私はテトラサイクリン系の抗生物質を出した。そして、「明日必ず皮膚科に行って下さい。私は皮膚科じゃないんだから」と言って帰した。この人は当院に掛かる前に、皮膚科に電話したらたまたま水曜が休みで、他はみんな「ウチは皮膚科じゃないから診れない」と断られたという。

     


    こういうのを「ともかく診る」のがあゆみ野クリニックの「内科」である。だから本当の内科じゃない。「内科、外科、上科、下科」だ。今流行の言葉で言えば「総合診療部」だ。ともかく何かあって他が診てくれないならここに来なさい、と言うことである。


    もちろん当院内科はそういうことばかりではなく、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症など「本当の内科」もやっている。検診で「尿酸が高い」と指摘された人の尿酸値を診て、「これまで痛風発作はありますか」と聞き、「最近の尿酸治療の常識は痛風発作があれば治療するんです。発作を起こしたことがなければ、別に尿酸が10でも11でも薬は出さないのです」と言えるだけの勉強はしている。


    糖尿病の人にも、きちんと日本糖尿病学会の最新のガイドラインを示して、「こういう合併症が起こるから糖尿は治療しなければいけないのです。その目標値はガイドラインではこのようになっています」と説明する。糖尿の治療をしている内科は石巻にいくらでもあるだろうが、外来に糖尿病学会の最新のガイドラインを常備して、「正常値はこれこれですが治療目標値はここです。なぜならこういう合併症を防がなくてはならないからです」とやる内科はそんなにないだろう。
    内科はあゆみ野クリニックのダークホースだ。総合診療部であるとともに日常内科疾患に関してはきちんとした最新のガイドラインやエビデンスを患者に示して治療する。地味ではあるが、地域のクリニックとして実は一番大切な役目であると思っている。

  • 投稿日時:2023/05/25

    どんな時にあゆみ野クリニック漢方外来を受診するべきでしょうか。



    まず、漢方を何も知らない医者が漢方薬を出したとき。漢方製薬メーカーの勉強会で「この病気にはこの漢方」と吹き込まれて漢方を出す医者がたくさんいます。これは非常に危険です。漢方は中国伝統医学がもとになっており、西洋医学とは独立した一つの医学体系です。それを学ばずにメーカーの宣伝で漢方を出すのは、西洋医学を学ばずに高血圧の薬をだすのと同じです。当院に受診してください。

     


    たとえ漢方専門医を名乗っている医者でも、「葛根湯に含まれている生薬はなんですか」と聞いて 「葛根、桂皮、麻黄、芍薬、大棗、生姜、甘草です」と即座に答えられない医者に漢方を出された時。こういうのは漢方専門医じゃありません。製薬メーカー専門医って言うんです。こう言う医者に漢方を出されたら、当院を受診してください。


    漢方薬で気をつけるべき副作用はなんですか、と質問して「漢方生薬で副作用に気をつけるべきなのは附子、甘草、麻黄、大黄、黄芩(オウゴン)、山梔子(サンシシ)であり、それぞれこのような副作用が起こり得ます、と答えられない医者が漢方を出した場合。自分の出した薬の副作用を知らない医者の薬を飲んではいけません。

     


    以上のような場合は、必ず当院漢方外来(オンライン診療含む)を受診してください。

  • 投稿日時:2023/05/25

    今日、あるオンライン診療を受けている方から、「先日の処方を飲んだら空咳がしていくらか息苦しさも感じた」と連絡がありました。ただちに服用を中止し、呼吸器内科でCTを撮って貰うよう話しました。その患者さんの処方には黄芩(おうごん、こばねばな)が入っており、黄芩は時に間質性肺炎を起こすからです。(後日その方から連絡があり、肺のCTでは異常がなかったということで私も一安心しました。

     


    漢方は天然物だから副作用はないとか少ないとか言うのは全くの嘘です。私が日本老年医学会のガイドラインで漢方について纏めた時、「漢方の有害事象」として一覧表を載せました。内容は下記の通りです。

     


    1) 附子含有製剤(八味地黄丸、桂枝加朮附湯など多数)
    附子はトリカブトの根であり、毒性成分aconitineを僅かながら残す。それで、軽いものは口周辺の痺れ、酷い場合は不整脈や血圧低下、呼吸障害を起こすとされる。コントロール不良の高血圧患者や頻脈性不整脈を持つ患者では特に注意が必要だ。

     


    2) 甘草含有製剤(漢方エキス製剤の7割)
    甘草は長期服用、あるいは過量服用で低カリウム血症を起こし、それにともなう高血圧、浮腫、不整脈などを起こす。ループ利尿薬と併用するのは基本的に避けるべきである。利尿薬との併用で心不全が増悪し、死に到った症例もある。

     


    3) 麻黄含有製剤(麻黄湯、葛根湯、麻杏甘石湯、五虎湯その他多数)
    麻黄はエフェドリン、シュードエフェドリンを含むので、過剰摂取すれば高血圧、幻覚、排尿障害などを起こす。コントロール不良な高血圧患者、虚血性心疾患を持つ患者、元々排尿障害がある患者では特に気をつける。

     


    4) 大黄、芒硝含有製剤
    当たり前だが、これらは強い下剤であり、過剰に摂取すれば下痢による脱水などを起こす可能性がある。もう一つ、既に触れたが大黄の瀉下成分はセンノサイドなので、長期に使用すると耐性を起こす。

     


    5) 黄芩含有製剤(小柴胡湯他多数)
    黄芩は単独でも間質性肺炎を起こす場合があるが、インターフェロンと併用することによりそのリスクが高まるため、併用は禁忌である。ただし元々間質性肺炎を有する患者に黄芩含有製剤を使って悪化するかどうかは定説がない。

     


    6) 山梔子含有製剤(加味逍遙散など複数)
    山梔子は長期(数年から十数年)にわたり使用すると、稀であるが静脈硬化性大腸炎を起こすことがある。長期連用は避けること。

     


    私はこの表を纏めた当事者ですから、これらの副作用についてはよく知っています。しかしだからと言ってここに載せた生薬を使わないというわけにはいきません。それぞれの生薬には必要な薬効があって、副作用が起きうることを知りつつ使うべき時は使います。ですから、私の処方を飲んでいて「変だな」と思った時はすぐ私にご連絡ください。それが副作用なのかそうでないのかは、私が判断出来ます。全て薬というのは効果と副作用があります。大切なことは、その薬を処方する医師や調剤する薬剤師がそういうことを知っているということです。知っていれば、患者さんの問い合わせにも即座に対応できますから、その薬を出しても心配はないのです。ところがこういうことを知らないで平気で漢方薬を処方したり調剤する医師や薬剤師が、残念ながら非常にたくさんいます。漢方を勉強していないのに漢方薬を出す医師とか薬剤師というのは、極めて危険なのです。


    ちなみに漢方薬にはもう一つ、「誤治」があります。例えば小建中湯を使うべき人に大建中湯を出したとか、桂枝湯を使うべき人に麻黄湯を出したとか。残念ながらメーカーの勉強会レベルで漢方を使っている医者の処方には、しばしばそういう誤治が診られます。これは副作用じゃありません。本来不適切な治療をしているから悪い作用が出ているのです。自分が飲まされている漢方は誤治じゃないかと疑う人は、当院のオンライン診療でセカンドオピニオンをお勧めします。セカンドオピニオンは保険がきかないのですが、当院では一回1万円でお受けします。まあ、普通に当院のオンライン診療を受けて戴いた方がお得ですけど。

  • 投稿日時:2023/05/25
    医師免許ってオールマイティーです。私は医師免許を持ってますから、明日から脳外科になりますと言って患者の頭蓋骨にドリルで穴を開けて脳に電気メスを入れても、法的には違法じゃありません。でもそんなこと普通やらないでしょう?心臓外科だって呼吸器の内視鏡だって、充分な知識を得、かつ経験を積まなければやりませんよね。


    なのに何故あなたは漢方薬はツムラの講習会に出ると処方出来ると思うのですか?私はそれが不思議でしょうがない。


    脳外科は極端な例だろうというなら、同じアジア伝統医学の鍼灸を例にしましょう。医師免許があれば、鍼を打てます。それは、そもそも鍼灸師の免許を規定した法律に「医師で無いものが鍼を打つ時には云々」と書かれているからです。つまり医師であれば問答無用に鍼を打っていいのです。


    では今あなたにセイリンの一番鍼を渡して「この患者は鍼の適応があるから鍼を打ちなさい」と言われたら打てますか?打てないでしょう。あなたは経絡も経穴も知らないし経絡弁証も知らない。何にも分からないのに患者に鍼なんて打てない。


    それってとても正常な感覚です。あらゆる治療行為は、その治療について理論を学び、経験を積み、効果と有害事象を知ってから行うべきです。それが分かっているからこそ、あなたはたった一本の鍼も打てないわけです。


    なのに何故あなたは漢方薬となると、途端にツムラの勉強会に出ただけで患者に飲ませられると思ってしまうのでしょうか?私はそれが不思議でしかたが無い。あなたは葛根湯に含まれている生薬が何かも知らない。一つの処方の中で生薬同士がどの様な役割を果たしているかも分からない。しかも生薬にはどの様な副作用があるかも知らない。


    それでいったいどうしてあなたは漢方薬が処方出来るのですか?


    それはおかしいのです。完全に間違っています(岩田健太郎風に)。葛根湯という処方をみて、これは傷寒太陽病傷寒に使う処方であって、葛根は清熱作用を持ち、麻黄と桂枝は辛温解表であり風邪を除き、芍薬は営気を補い、生姜、大棗は補助として脾気を補うのだと分からないのに、何故あなたは風邪に葛根湯が使えるのでしょうか。さらに桂枝は湿疹を生じることがあり、麻黄はエフェドリンやシュードエフェドリンによる血圧上昇、頻脈、甚だしければ幻覚を起こしうると知らないのに、何故あなたは風邪の患者に葛根湯を出せるのですか?


    おかしいでしょう。あなたのやっていることは、あなたが突然ドリルで患者の頭に穴を開けるのと同じです。そういうことは、やっちゃいけないんです。他の分野なら非常識だと分かるのに、何故漢方だけあなたの頭は途端にイージーになってしまうのでしょうか。


    漢方が分からなければ、使ってはいけません。脳疾患疑いの患者を脳外科や神経内科に送るように、漢方の適応が考えられる患者は漢方内科に送って下さい。餅は餅屋というのは、非常に重要なのです。



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