日本食は体に良い、は必ずしも真ならず。意外な認知障害。

2023/11/30

先日当院物忘れ外来に来られた80代女性。


まあ物忘れ外来に来るほとんどの方は、本人の意思で来るわけではないです。この方も、娘さんがどうも最近母がおかしいと言って連れてこられました。

外来での受け答えはなんとなく辻褄があっていましたが、MMSE と言う認知症スクリーニングテストをしたら認知症レベルです。しかし私はその検査結果を見て首を傾げました。変だな、これはアルツハイマーパターンじゃない、と言って幻視がないからレビー小体型らしくもない。なんだろう?

その答えは採血結果でわかりました。亜鉛とビタミンB12が著しく欠乏していたのです。一般にビタミンと言うとすぐ野菜や果物を思い浮かべませんか?その人は野菜中心の食生活でした。しかしビタミンB12食品、亜鉛食品でググってご覧なさい。肉、魚、卵、乳製品などが並びます。その人は田舎のおばあさんで、肉は苦手、魚は内陸でたまにしか食べない。そうすると、亜鉛やビタミンB12は欠乏するのです。ちなみに海藻が出て来ますが、残念ながら海藻は確かに亜鉛をたくさん含みますが、人間の腸は海藻をほとんど消化できません。あれは食物繊維として便秘には良いが、栄養源にはならないのです。

結局その方には亜鉛を含む胃薬プロマックを出しつつ、その方がお好きな卵や乳製品を積極的に食べていただいて二ヶ月したら物忘れは治りました。亜鉛が多い食品は牡蠣ですが、さすがに牡蠣毎日食べるのはちょっと大変だと言うのでたまたま亜鉛が含まれる胃薬プロマックで代用したのです。

伝統的日本食は体に良い、ビタミンは野菜や果物と思い込むのは間違いです。肉、魚、乳製品も大事なんです。きちんと採血しなければ、この人に認知症と診断してアリセプトか何かを出すところでした。高齢者医療はプロの仕事です。普通の内科はこう言うこと知らないですから。

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