「その漢方、どんな効果があるんですか」

2023/12/13

機能性ディスペプシアで胃が痛む人。他院でタケキャブ出されても当たり前だが改善しない。半夏瀉心湯と黄連湯を合わせてしばらく飲ませたら「最近は随分調子がよい」という。じゃあタケキャブとか私が出している漢方とか、時々飲み忘れたり半分にしてみて良いですよ、と言った。それで様子を見てくださいと。


ふと患者さんが、ところでこの漢方薬はどういう効果があるんですか、と訊いてきた。


ふっふっふ、痛いところを突いてくれるじゃないか、と私は診察室にあったツムラの手帳を取り出した。


実はこの二つはほとんど似た薬なんだ。ここに半夏瀉心湯に含まれる生薬が載っている。半夏ってのは気を巡らせる生薬だ。漢方というか、中国伝統医学では、体内を三つのものが巡ると考える。気、血、津液だ。血というのはざっくり血液と思って良い。津液もまあまあ体液と思って良い。血液、体液は体内を巡るというのは当然だよね、だけど血液も津液も物体だから、それが勝手にぐるぐる巡るわけじゃ無い。巡らせるエネルギーが必要だ。それが気なんです。気も体内を巡る。ところが時々その巡りが乱れたり滞ってしまうことがある。そうすると気持ちが鬱々としたりするんだが、それを気の滞り、気滞という。気滞をきちんと巡らせる治療法が理気で半夏は代表的な理気薬だ。


黄連と黄芩はイライラカッカを静めると共に炎症を抑える。あとの乾姜、甘草、大棗、人参は胃薬だ。だからこれは胃薬を主体にしながら気を巡らせ、ストレスによるイライラを静める薬になっている。


ところがこっちは黄連湯の中身だ。パッと見れば分かるように、半夏瀉心湯と似ているでしょう?半夏が入っている、黄連も入っている、胃薬の乾姜、甘草、大棗、人参も入っている。桂皮はこれも理気薬で気を巡らせる。


つまりこの二つはだいたい同じだ。だけどエキスの漢方薬は力が弱いから本当は倍量で出したい。でもそうすると保険が通らないから、ほぼほぼ同じな二つの処方を同時に出して倍量出したのと同じことにしたんです。


患者さん、なるほどと頷く。「ちなみにどこかで漢方を出す医者がいたら、この薬にはどんな生薬が入っているんですかと訊いてご覧なさい」と言ったら患者さん、「なるほど」と言わんばかりにやりと笑った。


フローチャート漢方とかで漢方処方する医者はこう言う患者に何をどう説明するのか、私は知らんけど。


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