トリカブトとニリンソウ、生薬、毒草、山菜の違い

2024/02/17

山菜の季節です。それで、山菜採りに長けた方はご存じと思いますが、漢方医としてご注意申し上げます。


トリカブトというものが猛毒だというのはご存じの方が多いでしょう。ところがこのトリカブト、実はその辺の野山至る所に自生しています。そして厄介なのは、ニリンソウという美味しい山菜とトリカブトがほとんど区別が付かないという事です。無論山菜採りの名人なら見分けますが、素人はほぼ区別が付きません。


ニリンソウはおひたしにするのです。ぐつぐつ煮込むものではない。ところが、おひたし程度の加熱ではトリカブトの毒は抜けないのです。それで例年ニリンソウと間違えてトリカブトを食べて毒に当たったという被害が起きます。


トリカブトの毒はaconitine(アコニチン)です。アコニチンは充分加熱すると加水分解して毒性がなくなり、そうするとトリカブトは附子(ぶし)という生薬になります。痛みや冷えを改善するのに欠かせない生薬です。しかし附子は充分に加熱して毒性を除いたものであって、生のトリカブトをうっかり食べたら即死します。アコニチンはトリカブトという植物のあらゆる所に含まれているので、葉でも茎でも根でも、生、あるいは湯がいたとかおひたし程度の不十分な加熱ですと、死にます。本当の生ですと、葉っぱ一枚食べただけで死にます。


白河附子というのがあって、これはほとんど加熱していないトリカブトです。鎮痛効果が高いというのですが、私は恐ろしいので使ったことがありません。みなさんに理解していただいたいのは、ニリンソウという無毒で美味しい山菜とトリカブトがほとんど見分けが付かないという事です。相当のプロでないと、この見分けは付きません。特にニリンソウが美味しい新芽の頃は、トリカブトとの鑑別は至難の業です。ですからニリンソウを見つけたという場合は、本当の玄人に良く鑑別して貰ってください。でないと・・・死にます。


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