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「保険医療の崩壊が始まった」第2弾。ペニシリンが手に入りません。

2024/02/26

今保険診療で手に入らない薬が咳止めだけではないというのは前回お話ししました。日本製薬団体連合会が行っている調査では、2024年2月現在保険薬価収載されている薬の内25.9%が「通常出荷以外」になっています。後発品(ジェネリック)に限れば35.8%が「通常出荷以外」です。これだけの薬が保険診療ではまともに手に入らないのです。

 

 

今日、衝撃的な情報が入ってきました。最も基本的な抗生物質であるペニシリン、商品名はサワシリン、あるいはアモキシシリンですが、この入荷見込みが立たなくなったというのです。今薬局にある分でおしまいというのです。

 

 

咳止めのアストミンの公定薬価、つまり医療保険で決められた値段が一錠5.7円だというのは前回書きました。サワシリン(250mg)1カプセルは先発品でも10.2円です。サワシリン(アモキシシリン)は外来で肺炎を治療するために絶対に欠かせない抗生物質です。これが手に入らないということは、外来では肺炎を治せないということです。肺炎を治せなければ、患者さんは死にます。

 

 

ペニシリンは世界で最初に見つかった抗生物質ですが、それは第二次大戦中のことでした。戦前はなかったんです。だから戦前、肺炎で死ぬのは普通でした。治療薬がないのですから。今サワシリンの入荷の見込みが立たないというのは、日本の保険医療は戦前に戻ったということです。しかしアストミン一錠5.7円とかサワシリン1カプセル10.2円では薬を供給できないなんてことは、誰にでもわかる話です。誰にでもわかるということは、政府の役人も政治家もわかっているということです。

 

 

すると、政府の意図は見えてきます。まあ、わかりやすい話ですが、政府はこういう薬は保険から外そうとしているんです。以前、漢方薬を保険から外すとか湿布を外すとか試みましたが、皆失敗しました。それで、「絶対に供給できない価格にしてしまえば、自動的に薬は保険診療からなくなる」と考えついた頭がいい役人か政治家がいたんでしょう。保険薬価はあまり面倒くさくなく政府がいじれますから、「絶対薬が供給できない薬価」にしてしまえば、必然的に薬は保険診療からマルっとなくなるわけです。どこかで潮時を見て「こういう薬は自費です」とやるんだと思います。

 

まあ国民も「医療費は安ければ安いほどいい」と思っているようですし、こういう政府の方針にも多くの人は賛成するんでしょう。日本国民って、集団マゾですから。

 

そして、これも前回も書きましたが、保険診療から薬が外れた先には、診察も保険から外れるという事態が待っています。だって今、再診料、つまり2回目から医者が患者を診察する費用が730円です。今はこれが基本料金で、高血圧や糖尿病などについては2500円とか追加料金があるから医者はどうにかやっていますが、6月からこの追加は無くなるんだそうです。そうなると、一人患者診察して730円、処方箋発行して680円、合わせて1410円ですということになってしまいます。無論皆さんの窓口負担はその3割とか1割とかですが。患者さん一人診察して1410円では医療機関潰れます。だから必然的に医者も保険診療から抜けるしかない。そういう日が、もう目前に迫っているのです。


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