医者が葛根湯を出すと言うこと

2024/04/30

先日、新見正則先生という漢方医とウェブで討論しました。

新見正則先生は
「ドラッグストアで患者が葛根湯買って飲んでも医者が患者に葛根湯処方して患者がそれを飲んでも、要するに患者が葛根湯を飲むのだから同じだ」と主張します。


しかしそれは違う。全然、違う。


葛根湯はドラッグストアで売っている。しかもそれは薬剤師の許可すら無しに患者が買える。しかしそうやって患者が葛根湯を買って飲むのは、要するに自己責任です。気取って英語で言えば「セルフメディケーション」ですが、要するに風邪ぐらいで病院に掛からなくたってドラッグストアで葛根湯買えばいいでしょ、と言うことです。


しかし。医師というのは国家資格です。医師法第十七条に「医師でなければ医業をなしてはならない」と定められています。


医師というのはそういう人間です。法律で唯一「医業をして宜しい」という権限を与えられているのが、医師です。
だから医師が葛根湯を患者に処方するというのは、その医師の法的権限に基づいて処方するということです。医師法に於ける「医業」として、処方するのです。


これは、責任を伴うのです。


患者が自らドラッグストアで葛根湯を買って自分で飲むのは、誰も責任を負いません。自己責任です。しかし医師免許を持つ医師が患者に葛根湯を処方するのは医業、医療行為であって、医師としての権限と責任において行う行為なのです。
全然違う。


医師たるものが、独占権である医業の一環として葛根湯を処方するというのであれば、その医師は葛根湯とはどういうものか、構成生薬は何で、どういう作用があり、どういう副作用が生じうるか、葛根湯が有効な病態は何か、熟知しているということが前提になります。


いま、全国で無数の医者が風邪の患者に葛根湯を処方していますが、ではその医者に「これはどんな生薬が含まれている薬で、どんな効果があるんですか?」と尋ねてご覧なさい。ほとんどの医者はそこで絶句し、葛根湯という処方を引っ込めるでしょう。


むろん、葛根湯の構成生薬は葛根、麻黄、桂皮、芍薬、大棗、生姜、甘草であることはツムラの手帳にも書かれていますから、手帳を読み上げる医者はいるもしれませんが、しかしその医者はそれぞれの生薬がなんであるかなんか、知らない。


そういうのは、医師法において医業を独占すると定められた医師の責任ある行為ではありません。根拠がない、無責任な行為です。だから患者がドラッグストアで自分で葛根湯を買って飲むのと医師が患者に葛根湯を処方することは、違うのです。


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