薬が消えていく話

2024/05/30

今医療の現場で、なんとも奇怪な現象が起きています。薬が次々消えていくのです。


初めは、咳止めでした。これはコロナの蔓延とサワイというジェネリックメーカーの不正が重なったからだと説明されました。次は漢方薬です。当初は呼吸器症状、特に咳に効く漢方処方が消えました。これは咳止めの代わりに使われているのだろうと考えられました。


ところが、事態はどんどん広まっていきます。先日お話ししたように、ペニシリンの供給が不安定になりました。これは日本の薬価が低すぎて中国から原料が買えないせいだと考えられました。


しかし、薬が手に入らなくなると言う現象は、次々に広がっているのです。アリナミンが手に入らない、抑肝散や麻子仁丸など咳とは関係ない漢方薬も次々手に入らない、セフェムと言ってペニシリンとは別系統の抗生物質も手に入らない、セルシンという安定剤の注射が生産中止になる・・・。時々何かの供給が復活するのですが、そうすると別の薬が手に入らなくなります。


こんなことは、30年医者をやっていて初めてです。「次は何がなくなるか分からない」状況です。明らかにこれは、個別の製薬会社の事情ではありません。咳止めと抗生物質とビタミン剤と漢方薬と安定剤と・・・。全然関係ない様々な薬が消えていきます。現れたり消えたりするのです。


一体本当は何が起きているのか、医者の私も分かりません。何を処方しようとしても、いちいち調剤薬局に「今この薬は手に入りますか」と聞かなければならない始末です。何か、とてつもなく大きな異変が起きていると感じます。一つ一つのメーカーの責任では、こんな広範囲に色々な薬が入手不可能になるなんて、説明が付きません。


非常に薄気味が悪い話です。


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