臨機応変ということ

2024/07/08

今日の外来はあたかも健診センターの様相を呈しているが、そのうちのお一人が診察を終えた後、「去年もこちらで診ていただきまして、すぐ循環器病センターに紹介していただいて命拾いしました。ありがとうございました」と言った。

 

 

電子カルテを見ると、確かにこの人は昨年も当院で健診を受けている。そして心電図を見て、「この心電図は健診結果が正式に返ってくるまで待たせられない」と判断し、その場で紹介状を書いて某循環器センターに送ったのであった。

 

 

循環器病センターの返事に、冠動脈(心臓を取り巻き、心臓そのものに血液を送る冠状の動脈)の一部に75%狭窄を認めたのでステントを入れたとあった。「無症候性心筋虚血」という。その人はおそらく何度か狭心症発作を起こしたことがあったはずだが、糖尿病を持っていたため痛覚が鈍っており、痛みに気が付かなかったのだ。しかし本人が気がつかなくても、かなり主要な冠動脈に75%狭窄があれば、放っておけば命に関わる心筋梗塞になる。それでステントが挿入された。

 

 

特定健診、つまり市町村がやる健診では「健診で異常所見があっても、それで直ちに治療に移ってはいけない」ことになっている。まずある医者が健診をやり、それを次の医者が二重チェックをして対応を決めるのだ。だから健診結果は早くて1っヶ月、長いと2ヶ月後になる。しかしその人の心電図は明らかに「これは2ヶ月後じゃやばい」というものだった。

 

 

ルールはルールだが、臨機応変も必要なのである。その方にこうして1年後、元気で感謝していたいてとても嬉しかったので記しておく。


PAGE TOP