石巻あゆみ野駅前にあるあゆみ野クリニックでは漢方内科・高齢者医療・心療内科・一般内科診療を行っております。*現在訪問診療の新規受付はしておりません。
新型コロナKP.3株流行について
2024/07/20
当あゆみ野クリニックでは、先週まで新型コロナの患者さんは毎日コンスタントに3,4人でしたが、連休明けの今週火曜日にいきなりどっと増えました。既に関東では一ヶ月前から大流行していましたので、連休中の人の移動で石巻でもばっと増えたと思われます。
色々な情報を総合すると、KP.3は人間の免疫系やワクチンが作る抗体をすり抜ける力がダントツに強くなっているため、ワクチンを打った人、過去にコロナにかかった人でも容赦なく感染します。事実上、室内でKP.3に有効な感染予防策は存在しません。マスクやうがい、手洗いetc.はまったく効果がないばかりか、ワクチンもおそらく感染予防効果はほとんど期待出来ません。なぜならコロナワクチンの基本的な効果発現の仕組みは「新型コロナウィルスに特別に反応する抗体を作る」事なのですが、KP.3はその抗体の攻撃をすり抜ける能力が格段に上がっているからです。つまりワクチンで抗体が出来ても、ウィルスが抗体の攻撃をすり抜けてしまうのですから、ワクチンの感染予防効果はほとんど期待出来ません。
重症化リスクについては従来のオミクロン株と基本的に変わらないというのが既に大流行している地区の臨床医の印象ですが、東京都ではKP.3が流行し始めてコロナに起因する入院が明らかに増えているというデータがあります。当院でも、今週連休明けの火曜日から今日金曜日までの間に2名、従来重症化リスクと考えられていた糖尿病や腎臓病などの基礎疾患がない40代の方二人を「コロナによる肺炎疑い」として日赤に送りました。そのうち一名は日赤の精査でコロナ肺炎と判明し、抗ウィルス薬が投与されています。もう一名は今日送った症例なのでまだ結果は不明です。これは、これまでのオミクロン株と「違うな」と思わせる点です。
症状においてこれまでのオミクロン株と明らかに違うのは、鼻閉と咳、痰が多いことです。これまではほとんど発熱と咽頭痛でしたが、今回明らかに鼻閉と咳、痰が目に付きます。そしてその「咳、痰」を訴える人の中に、オミクロン株になってからはずっとなりを潜めていた健常成人のコロナ肺炎確定例1名、疑い例1名がでています。
KP.3の感染予防対策は皆無です。当院では現在、発熱外来は全て駐車場に車を停めて待機していただいたまま、医療側は戸外にいる状態で行っています。戸外であれば感染確率は明らかに低いというのはこれまで一連のコロナ変異株で確認されているからです。発熱外来のブースに案内せざるを得ないときはN95マスクを着用します。またコロナ肺炎などが疑われレントゲンなど精査が必要な人は、御本人にN95マスクを着用していただいて院内で検査します。
N95マスクと言うのは本来空気感染する結核菌に対応するために開発されたマスクで、今のところ新型コロナに有効とされるのはN95マスクだけです。しかしこれはきちんと装着すると(つまりマスクの端から空気が漏れたりしないようにぴったり密着して装着すると)、付けていられる時間は15分から20分が限界です。非常に息苦しいものです。一方、今皆さんが通常使用しているマスクは現在の新型コロナウィルスに対しては完全に無意味です。逆に言えば、無意味なんですから無意味なマスクをする必要はありません。一部の店にいまだに置かれてあるアクリル板は、さらに無意味です。感染防御は精神論じゃないです。無意味なことは無意味なんです。
なお、現在非常に蒸し暑くなっています。コロナ特有の重症化でなくても、コロナで発熱し、かつ気温が高いという状況下では、どんな人でも容易に熱中症、脱水症を合併します。水分摂取を充分行うと同時に、エアコンを適切に使用して、熱中症を合併しないよう注意してください。コロナの合併症を医学的に厳密に言えば血栓症やコロナによる肺炎という事になりますが、「この蒸し暑い時期に大流行する発熱を伴う感染症」と言うことで考えれば、当然熱中症、脱水などは誰でも容易に起こりえます。充分な水分摂取とエアコンの適切な使用が大事です。学校でエアコンがない教室、なんてのは論外です。学校にエアコンがなければ、この間登校しないことをお勧めします。子供殺すなってことです。無意味な根性論は止めましょう。命の危険があります。
KP.3は「一つ屋根の下にいれば何をしても感染する」と思って下さい。しかし発熱して半日程度では、医療機関で使用している抗原抗体検査は正常に作動しません。「早期発見・早期治療」と行かないところがもどかしいのですが、きちんと検査陽性になるにはおおよそ症状発現から1日を要します。しかも、この「抗原定性検査」は「陽性は信用出来るが陰性は必ずしも信用出来ない」検査です。つまり、検査でコロナ陽性ならそのまま診断はコロナになりますが、検査で陰性であっても症状やその経過、周辺の人々の状況などを勘案して「これは臨床的にコロナ」と判断する場合はかなり多いのです。これは以前PCRが無料で受けられた時代、抗原定性検査陰性でも症状から強くコロナを疑った人にPCRをやるとPCRでは陽性、というケースが非常に多かったことで我々は学習しています。従って、「会社からは検査してこいと言われただけ」と言っても「検査は陰性だが医者が判断して総合的にあなたはコロナです」と診断したら「会社からはただ検査陽性かどうかだけ受けろと言われた」というのは止めましょう。診断するのは医師です。会社じゃありません。検査は医師の診断の一つの材料に過ぎません。医者がコロナと診断しているのに会社が「検査陰性だったら出勤しろ」と言い張るのでしたら「医者はコロナだと言っている。医者の言う通りなら職場中に蔓延するがそれで良いか」と脅すぐらいの姿勢が必要です。石巻の会社って医学知識0なのにめちゃくちゃ言う会社とても多いですから。餅は餅屋です。コロナについては医者の方が会社よりも適切な判断をします。
以上現時点でのご報告でした。