漢方の飲み合わせ

2024/12/21

ある患者さんが「産婦人科からこの2つの漢方薬が出ているのですが」、と相談されました。


その方は、まさに更年期という方です。その人にその産婦人科はクラシエの桂枝茯苓丸と同じクラシエの苓桂朮甘湯を出していました。その産婦人科の先生は、一応基礎的な漢方の理解はお持ちのようです。更年期症候群の代表的な治療薬として桂枝茯苓丸を出し、めまいが酷いときに苓桂朮甘湯を飲みなさい、と言って出したのです。まあ、一般的には悪くない話です。


しかし患者さんがわざわざ私に相談したのは、「クラクラめまいがするとき、この2剤を両方飲むとほてるんです」という事でした。そこで即座に私は、「ああ、それはこの2剤を両方飲むと、あなたには桂皮(けいひ)の量が多すぎるんですよ」と答えました。


桂皮というのは、ニッキです。京都の銘菓「八つ橋」に使われているものです。あれは、気を巡らせる生薬なのです。非常に重要で、効果も強い生薬ですが、桂皮の量が多すぎれば気を巡らしすぎて、逆にめまいやほてりを起こします。


クラシエのエキスでは、桂枝茯苓丸に1日量4g、苓桂朮甘湯にも4gの桂皮が使われています。合わせれば8gです。これが、その患者さんには多すぎたのです。もっとも、8gの桂皮なんか、わたしはしばしば使います。日本の漢方エキス製剤は大抵生薬の量が少なすぎるから、わざと同じ生薬を含むエキスを合わせて生薬の量を増やすなんて事はよくやるのです。しかしそこはあくまでcase by caseです。この方には1日8gの桂皮は多すぎて、それでほてりをおこしたのでしょう。


その人の脈、舌を覧て、私は「桂枝茯苓丸はあなたに最適だから飲みなさい。しかしめまいについては半夏白朮天麻湯を私が出すから、苓桂朮甘湯は止めて下さい。両方飲むとあなたには桂皮の量が多すぎるのです」と言ってツムラ半夏白朮天麻湯を1日2回で出しました。


更年期障害には桂枝茯苓丸、めまいには苓桂朮甘湯というレベルの理解だと、こう言うことがおきます。もっともその人に最適な桂皮の量なんてのは、出してみないと解らないのですが。

 

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