医者を通さずCTだけ依頼した方が良い病院の話。

2025/02/11

一週間前から38℃以上の高熱が起き、上下はするが改善しないという30代女性患者。コロナ、インフルエンザは他院、当院と2回やって陰性。胸部レントゲンと採血、採尿を行ったところ、レントゲン異常なし、尿検査異常無し。腹痛など腹腔内感染症を思わせる症状もない。しかし採血では、WBC(白血球)総数は8800と基準値内だが好中球の割合が80%を超え、所謂左方移動を認める。CRPも3以上だ。

上記の結果はなんらかの細菌感染を強く示唆するが、胸部レントゲン(2方向)異常なし、尿所見異常なしで、発熱の他は何の症状もないので、infection focus、つまり何所に感染が起きているのかが分からない。しかしよく訊くと、元々慢性鼻炎だ、鼻閉がある。そしてこの発熱には眼深部痛が先行していたことが分かった。

ここで私は思案してしまった。元々慢性鼻炎で鼻閉で、高熱に先立って眼深部痛が起きたのなら、副鼻腔炎の増悪が考えられる。副鼻腔炎を診断するにはCTを撮るのが一番はっきりする。しかし石巻の耳鼻科でCTが撮れるところと言うと、あの悪名高い市立病院しかない。あそこの耳鼻科は以前メイアクトを処方した奴だ。

うーん。

私はしばらく考えた末、副鼻腔炎疑いとしてその患者をその悪名高い市立病院に送ったが、患者に「出された薬は絶対に飲まないで私に処方箋を見せるように」と言った。

患者はそこに受診したその足で私のクリニックに来て、処方箋と医者の言葉を伝えた。その悪名高い市立病院の耳鼻科医はCTを撮って「副鼻腔炎ではない」と言い、クラリスを出していた。

そうですか、この薬は飲まなくて良いです、私が抗生物質を出しますからそれを飲んでくださいと私は患者に告げ、オーグメンチン・サワシリンといういつものペニシリンのセットを出した。その悪名高い市立病院耳鼻科医師からは翌日に返事が届いた。それに曰わく。

副鼻腔炎は認めません。伝染性単核球症など、ウィルス感染症を疑います。

さて、あなたに話がある。

伝染性単核球症はEBV(エプスタイン・バールウィルス)感染症だ。しかしこの疾患ではリンパ球の低下や単核球の上昇が起こることはあるが(全例ではない)、好中球の増加、つまり左方移動は起きない。しかも、あなたは「ウィルス性疾患を疑う」と言いながらクラリスという抗生物質を処方した。

「ウィルス性感染症に抗生物質は無意味だ」という事すら、あなたは知らないのか。

私は患者に、「この市立病院耳鼻科には、要するに副鼻腔炎があるかどうか診断させたかっただけです。副鼻腔炎ではないことがCTによって明らかになったので、もうここの耳鼻科に用はありません。あなたにはちゃんと効く抗生物質を出します」と言ってオーグメンチン・サワシリンを出した。

すると、処方3日で高熱は下がった。36度台になった。そこでもう一度採血したら、WBC(白血球)は3000未満だった。好中球の割合は正常になっていた。

つまり、初診時の白血球8800は、検査の基準値内ではあったが、この患者にとっては相当に増加していたのだ。すなわち、初診時の採血結果は「白血球総数の増加に好中球割合の増加を伴う」と読み直すべきだという事だった。それならこれは、明らかな細菌感染を示唆するデータであって、その悪名高い市立病院耳鼻科医師がいう「ウィルス感染症」でも「伝染性単核球症」でもない。なんらかの細菌感染が起き、そこに私がペニシリンを投与したので感染源は不明であったがその細菌感染は治癒した。そういうことだ。

全く以てあの市立病院の耳鼻科は・・・。こんなことなら始めからCTだけ依頼すればよかった。あそこは、医者の目を通せば通すほど、話がおかしくなる。CTの装置は優秀なんだから、医者を取り替えろ。


 

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