救急医療と地域医療・漢方診療

2025/04/14

今日、ある患者さんに喘息発作の話をしました。昔私がとある病院で当直していたとき、駆け込んできた中年女性が玄関で「息が・・・」と言った途端倒れたのです。呼吸が止まっていました。常連の患者だったので、その人が喘息発作を起こしていることはすぐに分かりました。窒息しているのです。ただちに気管支挿管を試みましたが、その人の気管支は完全に閉鎖していて、管が入りませんでした。もう少し環境が整った病院であれば、喉の甲状腺の下にグサッとメスを入れて気管支に届けばそこに管を突っ込めたでしょうが、そこはたまたま田舎の病院で、そこまではやれませんでした。結局その人は、私の目の前で亡くなったのです。忘れられない記憶です。


その話を患者さんにしたら「先生は昔そんな救急をやっていたんですか」というのです。「ええ、そうですよ。そういう救急の修羅場を散々くぐったから今こうしてクリニックをやっていられるんです。救急の経験がない開業医なんか、駄目なんです」と答えました。


何しろ私の医者としてのスタートは坂総合病院、有名な救急病院です。そこからあれこれたどったあげくに今開業しているのです。そういう、いざというときの救急対応というのは、とっさに体が動かなければなりません。じっくり考えている暇はないのです。


そういう、苦い経験を散々積めばこそ、漢方医が務まり、田舎の開業医がやれるのです。そういう経験をせずに、初期研修終わりました、はい親のクリニックを継いで開業しますとか、都会で漢方外来やりますなんて言うのは、全然駄目なんで御座います。


PAGE TOP