石巻あゆみ野駅前にあるあゆみ野クリニックでは漢方内科・高齢者医療・心療内科・一般内科診療を行っております。*現在訪問診療の新規受付はしておりません。
「目の前で締めた鶏」を喰った話
2025/04/16
今、日本でもアジア各国でも、大抵の鶏肉はブロイラーです。ブロイラーは本来臭い。その臭みをどう抜くか、私の相方はタイ人や中国人から訊いて知っています。別に難しいことではありません。ブロイラーの肉は適当な大きさに切った後しばらく料理紙に包んで水を抜けば良いのです。それだけです。ブロイラー特有の臭みは、しばらくそうやって水抜きすれば消えます。しかしそれすら知らない、あるいは知っていてもその手間を省くバイトだけで廻しているチェーン店などでは、ブロイラーは臭いのです。
地鶏というと高値で売られていますが、本当に地鶏なんでしょうか。我々消費者はその現場を見ているわけではありませんから、比内鶏だなんだと言われても、実はどんな代物か、分かりません。
私が人生でただ一度「確実に地鶏を食った」事をこの目で確認できたことがあります。しかしそれは、日本ではありませんでした。
1999年、私は中国の安国(アングオ)という有名な生薬市場を視察したのです。当時は今ほど医者と製薬メーカーの関係がやかましくありませんでした。それで、私は「是非安国の生薬市場をこの眼で見たい」と色々な漢方薬や生薬の会社に相談したのです。つまり私自身、その当時は「若き漢方医のホープである私がこういう視察をしたいと言えば、どこかの会社はそれを全面的に支援するだろう」と思っていたのです。そしてそれはその通りになりました。
今ではそのような関係は指弾されてしまいますので会社名は明かしませんが、Uと言うメーカーが「それでは」と言ってくれました。全部会社持ちです。仙台から安国に行くのは、まず仙台から北京まで飛行機で行き、そこから地域の中心都市である天津に行き、さらにそこから車で安国に行くのです。その全てがメーカー丸抱えで、しかも天津ではそのメーカーの工場に案内され、副社長の接待を受けました。
まあ、それはその当時はそういう時代でしたという事です。
しかし私がここで語りたいのはその話ではありません。安国は生薬市場としては中国四大生薬市場の一つとされ今でも主要な生薬市場ですが、当時は如何にも田舎町でした。天津から車で安国に行くまで、かなり遠かったのです。因みに手配してくれたメーカーはクラウンを用意しました。1999年当時としては日本企業がいわば「VIP」待遇の東北大学の漢方医を接待するには、クラウンしかなかったのです。まあそれはそれとして。
運転手と通訳が私に付きました。この三人で安国まで行って帰ったのです。その帰り道昼飯時になり、通訳は運転手に中国語で何事かを言い、どこかのドライブインに車を停め、私たちはそこで昼食を摂ることになりました。私は完全にお任せです。通訳と運転手と店の女主人が何やらわいわい言い合ったあげく料理が決まりました。その時私はたまたま尿意を催しました。トイレはどこかと聞くと、庭の外だと。つまり、「厠」だったのです。店から裏庭に出るとその当時の「ニイハオトイレ」がありました。別に小便をするだけでしたから私は構わずそこで用を足したのですが、トイレから出た丁度その時、その店の女主人が庭に放し飼いだった鶏を一羽捕まえるのを見たのです。その鶏は、しばらくして中国東北部特有の香辛料を効かせた鍋となって私のテーブルに現れました。一羽まるごと締めたのですからご馳走です。当時としては贅沢だったでしょうが、そこは日本企業の丸抱えの視察旅行だったわけで、関係者一同それに乗ったのです。
美味かったなあ、あの鶏鍋。
ついでに今思い出したのですが、安国の晩飯は羊のしゃぶしゃぶ鍋でしたが、とんでもなく辛かったです。なおタイトルの画像は安国の生薬市場です。