ブログ

  • 投稿日時:2025/03/13
    今月からあゆみ野クリニックに一人、70代の看護師がパートで入った。当初私は、「この人はともかくいてくれれば良い」と思って採用した。本人が努力家で頑張り屋なのは初日から分かっていたが、何しろ70代なのだから、むしろ無理はしないでほしいと思っていた。

    ところがこの方、当院の看護リーダー(来月から看護師長)の指導の下、これまでやったことがなかった業務を一つ一つ覚え、おそらく来月初めには当院で必要な看護業務、検査補助は多分一通りやれるだろうと思っている。新しいことを覚えて実践する能力が非常に高い。

    篠塚という農学者が、要らんことに教育に口を出し「教育では褒めるより驚いたほうがいい」と主張していた。とある事をきっかけに私は彼をFBでブロックしたのだが、彼の「驚く」は「驚いてみせる」というに近かった。だから私は彼の主張を嫌っていたのだが、今私はこの70代看護師に、率直に驚いている。掛け値無しに、お芝居ではなく驚いている。70代の人がこれほど早く今まで経験したことがないことを習得出来るとは、まさに思ってもみなかった。彼女の時給は当院のパートの時給の最低額なのだが、この調子でいくのなら、彼女の時給は上げなければならないだろう。

    「驚く」の教育効果は無論高いだろうが、それは「本音で驚く」場合だ。「驚いて見せた」ところで、それは相手が見抜くから無意味なのだ。この方について、私は真に驚いている。いや、仰天している。高齢化と言っても、高齢者でこれほど能力が高い方が市井に埋もれているのであれば、その方々を引き出せばこの社会に希望はある。
  • 投稿日時:2025/03/13
    当院の医療事務募集に、一人のケアマネが応募してきた。何所の誰かは知らない。40代女性のケアマネ、と言うことしか分からない。応募理由がただ一行

    「ともかく早く今の仕事を辞めたい」。

    実は、当院心療内科の患者にもたくさんのケアマネや、さらにその上まで行って介護業界の中心を担ってきた人々がいる。皆長年苦労に耐えに耐えてきたが、昨年国が行った「診療報酬大改訂」で介護保険の報酬があからさまに切られた結果、「介護」というのは業種としてなり立たなくなった。それまで、そもそも介護に情熱を燃やして頑張ってきた人々すら、あの診療報酬大改訂を突きつけられたら、「ああ、日本という国は介護は公的保険の対象にはしないのだな」と理解せざるを得なくなり、皆辞めている。

    彼らの苦悩は深い。介護保険制度は1980年代に始まった。だから今介護業界の中堅にいる人々にとっては、物心ついて以来「介護」という業種は存在し、彼らはそれに生きがいを見いだしてきたのだ。ところが去年国が行った診療報酬大改訂は、要するに「介護保険というのは早々にやめます、介護は出来る人は勝手に個人がやってください、あるいは自費で頼んでください。公的保険制度としての介護はやりません」という宣言に等しかった。国というのはそう宣言しなくても、要するに保険の点数を動かせば、実質的に「そういうことです」と言えるのだ。

    団塊の世代がこれから要介護に突入するのに、これだけ国力が落ちた日本が介護を公的に担保するなんて無理です。要介護の人は、自分にお金がないのであれば、そういう人生の結末を迎えてください。国は知りません。

    去年の診療報酬大改訂の言わんとすることはまさにそういうことだった。だから今訪問診療からは多くの医者が撤退し、介護業界全体で撤収や破産が相次いでいる。しかし国にとってはそれこそまさに「狙い通り」であって、「今後介護に国は責任を持ちません」ということなわけだ。

    通常なら、ニーズが増えれば産業は勃興する。ところが公的な金でやると、ニーズが増えすぎると「公的資金では対応出来ません」となり、「ニーズが多いから産業が潰れる」という事態が起きる。介護はまさにその実例である。
  • 投稿日時:2025/03/13
    物忘れを心配して受診される高齢者を採血すると、ほぼ100%亜鉛不足と判明します。もちろんその中にはアルツハイマー病始め様々な認知症の方も多いのですが、そうである方もそうでない方も、ほぼ全員が亜鉛の量は基準値を大きく下回っています。


    亜鉛が不足すると頭がぼーっとするのです。だからそう言う方に薬で亜鉛を補充すると、一回で「頭がすっきりしました!」と言います。無論、本当の認知症治療はまだその先があるのですが、とりあえず採血して亜鉛が不足していればそれを補う。それだけで「ぼーっとしている」のは相当に改善されます。


    亜鉛というのは、主に肉の赤身に含まれるのです。だから肉を日常的に食べる食習慣がない方は、大抵不足しています。牡蠣やほうれん草の亜鉛含有量もそれなりにはあるのですが、牡蠣は毎日食えるものではないし、ほうれん草のような繊維質の野菜は、実は非常に吸収効率が悪い。殆どうんこになるんです。この辺は、野菜を推奨する方々に是非ご理解戴きたいのですが、野菜というのはいくら色々な栄養素が含まれていても、肉や魚と比べると非常に腸管に於ける吸収効率は悪いのです。ですから、栄養素の含有量を比較しても駄目なんです。人間は哺乳類で、草食動物ではないので、牛のように胃が4つあるわけではありませんから、繊維が多い野菜はなかなか消化吸収出来ません。便秘にはそれが良いのですが、野菜の栄養素はそのまま人の身体が吸収出来るものではないという事は、事実なのです。

     
  • 投稿日時:2025/03/13

    JAMA(アメリカ医学会雑誌)という、世界三大医学雑誌の1つに載った、食習慣やお腹の脂肪と認知症リスクは関係するかという皆さんご注目の研究。対象者が中年から高齢に至るまで、21年間も観察を続けた結果です。
    結論だけ言うと、中年時代から食習慣を改善することはアルツハイマー病で「短期記憶」、つまり「ついさっき」の記憶を掌る海馬の機能を維持すると判明し、また中年時代の腹太りは高齢になってから記憶能力を下げ、高度の判断能力も悪くするんだそうです。


    中年諸君、食事の改善とダイエットだ!いや私はもう還暦過ぎたからどーでも良いんですが。

  • 投稿日時:2025/03/12

    あっちでもこっちでも人材難です。当院もそうです。

     

    しかしですね。


    私はこれは全国的に「教育」を怠った、あるいはわざと誤魔化したツケだと思います。一切未経験、資格もない人が医療事務に応募してきたり、職場の工事現場で高い足場から転落して膝を痛めたのに病院も受診せず(当然会社も受診させていない)、従って労災認定も受けていない。「社会という仕組みを若い人々に教えないようにした方が都合が良い」と考えてやってきた結果、社会に人材がいないという、巨大な損失が生まれているのです。身から出た錆でなくてなんでしょう?

     

  • 投稿日時:2025/03/11
    あゆみ野クリニックでこれ以上心療内科を続けて良いのか、今迷っている。私は、他人の人生を歩んでしまっている。来る日も来る日も、人生に追い詰めたられた人々が来る。来る日も来る日も、人生の苦しみを訴える人々が来る。絶え間なく。


    最近、明らかに私の精神がおかしい。相方に当たる度合いが酷すぎる。その理由を考えていくと、結局石巻のみならず、周辺諸地域全てから集まってくる他人の人生の苦しみを毎日毎日受け止めているのが、もう私にとって限界なのだ。医者として客観的に受け止めているつもりが、実は出来ていないのだ。


    私には私の苦しみがある。スタッフが急に辞めた、医療事務が揃わない、経営が、自らの老いが・・・。


    そんな中で、他人の人生の、しかもそれぞれが全く違うそれぞれの人生の苦しみ悩みを抱えてくるのを、今の私はもう受け止めきれない。


    看護師は看護師なりに、医療事務は医療事務なりに、それぞれの持ち場を果たしてくれる。いやそれどころか、当院のスタッフは私の気がつかないところで、それ以上の仕事ぶりを発揮してくれている。彼らがいなければ、私はもうとっくに潰れていただろう。彼らは可能な限り私一人に荷重が集中しないように私を助けてくれているのだが、しかしそれでも私は今のままでは潰れてしまうと思う。いや、私が潰れると言うより、相方を危険にさらしてしまうことを恐れる。


    おそらく、ソーシャルワーカーという職種の方が一人必要なのだと思う。私個人が塵労の世の全ての苦しみを引き受けるのは無理だし、これ以上そうやってはいけないのだ。


    石巻で働いてくれるソーシャルワーカーなんて人が見つかるかどうか分からないが、しかしそういう人の助け無しに、私は今の仕事を続けられないと思う。

     
  • 投稿日時:2025/03/09
    当院に来て、私が漢方薬を出すと、次に受診したとき患者さんが「びっくりしました!先生から戴いた漢方薬で、本当によくなりました。これまであちこちで漢方薬を出されたけど全然効かなかったのに」

    と仰ることは良くあります。そう言われたとき私は
    「そうですか。それで、これまであなたに漢方薬を出した医者はこうやって脈を触れたり舌を覧たりしましたか?」
    と訊きます。
    「いいえ、こんなことはどの先生もやっていません」
    「そうでしょう。それは、その医者は漢方医学も中医学も一切学んでいない、知らないという事です。薬というのは、その背景にある医学薬学を知らなければ、きちんと処方することは出来ません。つまり、医者でも薬剤師でもない人が出した薬と同じです。そんなの、効くわけ無いんです」

    だいたいの患者は、それで納得します。


    別に私は、それほどたいした漢方医ではありません。普通に漢方医学、中医学を学んだだけです。しかし、患者に薬を処方するからには医学をちゃんと学びなさい。そういうことです。

     
  • 投稿日時:2025/03/09
    石巻市医師会は現在休日内科当番医制度を敷いています。4月13日の日曜日は当あゆみ野クリニックが当番医の予定でしたが、2月、3月と辞職希望者が数人出てしまい、その対応に苦慮しておりましたので院長の私から医師会に「その日の内科当番は不可能」と伝えたところ、医師会から「では4月13日の内科当番は無しとした」と連絡がありました。結局、他のどの医療機関も対応出来なかったのです。


    当院の事情で4月13日の内科当番医が出来なくなったことは、石巻市民に深くお詫びいたします。しかし予期せぬ人材流出で、どうにもなりませんでした。幸い、辞意を表明した方がお一人その辞意を撤回してくださり、また多くの方々のご支援を賜って、当院は4月以降も診療継続が可能になりましたが、色々やりくりしながらの診療継続になりますので、どうしてもいきなり4月13日当番医は無理です。大変申し訳ございません。院長である私の不徳のいたすところです。


    以上がお詫びですが、これから今後のことを書きます。


    既に先日石巻医師会報に、石巻医師会長が「内科当番医制度はもはや限界だと斉藤市長に伝えた」と明記されたのです。


    石巻では年々何件かづつクリニックが閉院していき、一方新規開院はない状態です。こういう状況下で、現在石巻市内の内科系クリニックが日曜・祝日の当番医を引き受けるのは困難だというのは客観的な事実です。


    前回当院が当番医をやったのは12月29日ですが、120名以上の発熱・急患が押し寄せました。当院は、医師一名、看護師2名、事務2名です。小さなクリニックなのです。そういう所に120人以上の発熱を中心とした急患が押し寄せたのですから、当然対応しきれませんでした。朝8時前から電話が鳴り続け、診療が終わったのが夜の8時過ぎでした。私含めスタッフ全員倒れる寸前でしたが、それでグーグルコメントに書かれたのが「コロナの検査なんか15分で結果が出るのに2時間以上待たされた」という不満のコメントでした。


    医師会に、この内科休日当番、いつまでやるんですかと聞いたところ、70歳までですと。


    出来ません。


    当院は、看護師2名、事務2名はいますが、どのみち医者は私一人です。今カルテというのは電子カルテになっていますが、そもそも端末は4台しか無く、2つが事務用、1つは看護師用、そして医師が使える端末は1つだけです。つまり、医者が足りないんだったら誰かバイトの医者を呼べと言われても、医師が使える端末は一つしかないのですから、どのみちどうにもなりません。端末一台増やせと言われましても、その莫大なコストは回収出来ませんからそんなことは出来ません。


    つまり、当院はこれ以上のキャパは拡大出来ません。従って、あの12月29日の休日当番のように120人以上が押しかけたら、5時間待ち、6時間待ちになってしまうのです。


    毎日100人以上を診療している内科系クリニックは珍しくありませんが、それは「お変わりないですねー、いつもの血圧のお薬出しますねー」という患者が殆どというケースです。休日当番はそうではなく、「患者全員が急患」なのです。まったく負荷が違うのです。


    今後も市中のクリニックの閉院は毎年続き、新規開設はないでしょう。なぜなら石巻市の人口そのものが急速に減少しているのですから、新規開業しても全く経営の見通しは立たないからです。そういう現状では、年々減少する石巻市内の内科系クリニックが年間通して全ての日曜日、祝日、年末年始、お盆休みを当番医として引き受けるのは、間違いなく不可能です。医師会長が市長に「このやり方は今後不可能です」と告げたのは正しいのです。


    内科当番医に代わる制度が必要で、かつ急務です。たとえば夜間休日医療センターで休日日中内科診療も引き受け、そこに一定年齢以下の内科開業医もローテーションに入りつつ、一部は外からバイトの医師に来て貰うなどの対策を私は提案します。


    お前のせいで当番医に穴を開けたのになにをえらそうに、というご意見は甘受しますが、しかしどのみち内科当番医制度が立ちゆかなくなっていることは事実なのだから、たまたま今回私のせいで4月13日の内科当番医がなくなったことをきっかけに、どのみち取り組まなければならない「内科当番医に代わる制度」を石巻市全体が早急に「検討」ではなく「実行」していただきたいと願う次第です。

     
  • 投稿日時:2025/03/06
    これは以前も書きましたが、大事なので何回も書きます。

    海産物にあたった下痢嘔吐、つまり食あたりは水飲んで下痢すれば治ります。下痢止めは使うな、それだけです。

    しかし、ユッケとか生焼けの肉とか、肉が原因と疑われる食あたりは要注意なのです、基本的に、ユッケのような生肉を日本人は食べてはいけません。生肉にはいくら新鮮であっても、あるいは新鮮なほど、なんらかの細菌がいます。アジア大陸や、日本でも九州の人々などは昔から馬刺し、馬のレバーの刺身などを食い、何の問題もないのですが、それは彼らが代々そう言うものを喰って、そこに存在する細菌に適切に対応する能力を進化論的に身につけているからです。そうでない土地の人が馬刺しやユッケを食べたら、ただでは済まないのです。

    石巻は漁港の町ですから、土地の人は海産物は食べ慣れています。もっともいくら食べ慣れていてもアニサキスには酷い目に遭いますが、その他の「感染性胃腸炎」にはある程度対応能力があります。しかし肉の感染症には、石巻の人は極めて弱いのです。生焼けの肉を食った、焼き肉屋でユッケを食ったなんて言う人の便培養をすると、コレラとかO157のような、びっくり仰天する細菌が出てきます。だから当院は、食あたりの原因がどうも魚介類だと診たときはやりませんが、肉が疑われるときは必ず便培養をやります。便培養は、男性患者は私がやりますが、女性患者は女性看護師がやります。なぜなら患者さんに尻を出して貰い、麻酔薬のゼリーを塗った後肛門に綿棒を突っ込むからです。

    そういうのは、患者もいやでしょうがこちらも敢えてやりたい検査ではありません。しかし「肉が感染源」と疑ったときは、絶対に必要な検査です。本当に、とんでもない感染源が見つかり、石巻保健所を巻き込んで大騒動になることすらあるからです。
  • 投稿日時:2025/02/28
    今必死に人材募集をしているが、応募しようとする人が躊躇する最大の理由が当院は医師国保、国民年金だという事だ。

    医師国保の負担額は社保とほぼ変わらないのだが、厚生年金から外れるというのが躊躇の理由になる。

    しかし、今現役で厚生年金を負担している人が年金受給年齢に達したとき、はたしてこの国の年金制度ってあるんですかと私は問いたい。

    私個人は、去年60歳になったときから年給受給を請求した。65歳から受給するよりこんなに年金額が減りますと年金事務所の窓口職員に言われたが、


    「いや、そういう架空の計算に興味はありません。私はそもそも、今から5年後に日本の年金制度が存続しているかどうか、極めて疑わしいと思っていますから、取り返せるうちに取り返せる分を取り返すんです」と言い放ったら窓口職員はパッと態度を変えて、さっさと私の年金受給の手続きをしてくれた。

    簡単に言うと、65歳から受給すれば15万になるはずの年金を60歳から受給したから月10万に下がったのだが、そういう計算はそもそも五年後この国の年金制度、存続してるんですか?形の上で存続していても、年金受給年齢は確実にさらに繰り上げられますよね?という主張の前には無意味だ、と言うことだ。

    およそ今働いて年金を払っている人々は、将来確実に損するんだから、年金が厚生年金なんて言うのは、負担額だけ多くて損するだけです。日本国そのものの存続すら危ぶまれる今、年金制度があなたが今の受給年齢、つまりあなたが65歳になったときどうなるかなんか、全く信用出来ない。

    だからこそ当院は国民年金にして、厚生年金職場負担分は「今の給与」にしている。全く当てにならない厚生年金を本人も当院も負担するより、その分国民年金にして、「盗み取られる金」を最小限にし、その分は給与を高くするからそれで将来設計をしてくださいね、と言うのが私の考え方なのだ。

    重ねて言うが、厚生年金が国民年金よりも得だというのは、今の日本国というシステム、あるいは日本国の厚生年金というシステムがあなたが年金を貰う年齢になったときに今のまま存在すると仮定しての話だが、これほど急激に少子高齢化が進行するなかで、そんなことはあり得ないんです。だから「厚生年金」に加入して国に余計な年金を払うのは、今の現役世代にとっては完全に無駄です。

    公的年金ってのは、国が経済成長する中では辻褄が合いますが、今のように少子高齢化と人口減少が進む日本社会では、確実に払う人が損するのです。

     

PAGE TOP