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  • 投稿日時:2024/02/08

    ある方が来院されました。中年男性。主訴は強い全身倦怠感と関節痛。熱はなし。外で仕事をする人で、真冬ですから体は冷えている。コロナ、インフルエンザ検査は陰性。普段は他の医院で高血圧の治療中。

     

    熱もない、喉も痛くない、咳もない、なんでもない風邪・・・ではあるのですが、私は患者さんにこう聞きました。

     

     

    あなたは最近かなり無理をしていますね?

     

     

    すると患者さんは、そうです、残業続きでかなり参っています、と言うわけです。

     

     

    そこで私はこう言いました。今のあなたは、おそらく「普通の風邪のウィルス」にかかっています。ところがあなたは残業残業で体力がヘトヘトだから、本来風邪をひけば熱が出るはずなのに出ない。熱がないから大丈夫じゃなくて、体力落ちてるから熱も出せないんです。私があなたの残った体力を一気にぐいっと持ち上げて風に対抗できるようにする漢方薬を出すから、これを熱湯で溶かして熱いまま飲みなさい。飲んだらそのまま寝ること。少なくとも今日は仕事に行っちゃダメ。おそらく、その漢方薬を飲むと熱が上がるかも知れません。それはそれでいいんです。漢方で体力を(漢方で言えば「気」ですが)をぐいっと持ち上げるから、本来風邪を引いた時に出るはずの熱が出るのです。しかしこれは一時的な処置です。体力を本当に回復させるには、養生しかない。どうにかして養生してください。そうでないと今度は本当にガタッときますよ。

     

    まあそうは言ってもお忙しいんでしょうから無理をされるんだろうと思いますが、こう言う風邪は漢方の目でみると、要注意なんです。

     

    ちなみに処方は桂枝湯(けいしとう)と麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)でした。

  • 投稿日時:2024/02/06

    みなさん「咳止めがない」ってご存知ですか?今、インフルエンザやコロナで咳がひどい人に咳止めを処方しても、薬局に咳止めがないのです。いくら処方箋で咳止めだしても薬局が問屋から買えないんですから、処方できない。

     

     

    同じ薬局で売ってる自費の咳止めは買えます。なぜ医療保険で処方する咳止めはなくて自費なら買えるのか。

     

     

    理由は単純です。医療保険で決められた咳止めの値段が安すぎる。

     

     

    保険診療ってのは、全ての値段が国によって決められています。薬の値段も全部国が決める。それで、一番代表的な咳止めアストミン一錠の値段が5.7円なんです。一錠5.7円で売れと言われたって、そんなに安くアストミン作れない。いくらジェネリックでも無理。飴玉一個だって5.7円じゃ買えないでしょう。製薬会社が「日本のアストミンの公定価格5.7円なんだけど、それでどうにかうちが利益出せるようにアストミンの原料売ってくれ」って中国の会社に頼んだら、あっさり断られたそうです。

     

     

    そりゃあそうでしょう。どっちも商売です。末端最終価格5.7円の薬で利益出るように原料買おうと言っても、原料売る側だって「そんな値段じゃとても売れない」ってことになります。

     

     

    実は咳止めだけではないです。大事な大事な抗生物質であるペニシリンも、インフルエンザの治療薬で小児用のタミフルドライシロップも、全然手に入りません。理由は同じ。国が公定価格下げすぎて、そんな安い値段じゃ作れない。原料買えない。

     

     

    安けりゃいいってもんじゃないんです。値段下げすぎて作れない、手に入らないんではどうにもなりません。ちなみに薬局で自費で咳止め買えるのは、薬局に置いてある薬の値段は国の公定価格じゃないので、ちゃんと利益が出せる値段で売ってるからです。

     

     

    医療費は安くと言ったって、限度があるんです。

  • 投稿日時:2024/02/03

    ネットには思わずひっくり返るようなトンデモ医学情報が溢れています。枇杷の種はガンに効くと熱心にFBで広めて回ってる人がいました。コロナは生物兵器だとか、コロナワクチンは暗号が仕組まれていて打ってしばらくすると死ぬんだとか、まあ、ねえ、ってやつです。

     

    医学や物理学について分かりもしないのにネットの断片的な情報を見て「ネットでこう書いてある」と数学者や物理学者にしたり顔に言ってのける素人はまずいない。私もそんなことは言わない。ところが医学になると何にも系統的に勉強していないのにネットで断片的な情報を見て「ネットでこう書いてある」と医者や医学者を相手にしたり顔で言う素人がやたらと多い。なんでこうなるのかなあと考えていてふと思いついたこと。

     

     

    数学や物理は学校で教える。それで大半の人は「自分には数学も物理もわからない」と言うことを思い知る。私もその一人。そこで「数学わかる、物理わかる、面白い」と言う人は本当に数学区や物理が理解できる人だから、そう言う人は数学や物理について素っ頓狂なことは言わない。そして99.999%は私も含め「数学や物理は自分にはわからない」と言うことを理解する。無知の知。

     

     

    文系もそう。漢文古典は言うに及ばず、現代国語だって「自分が日本語をかけて話せる」ことと「ちゃんとした小説を読めた理解したり書いたりできる能力は違う」と言うことを学ぶ。要するに学校教育で学ぶことは、「世の中の大半の学問、専門知識は自分にはわからない」と言うことを学ぶのだ。

     

     

    ところが医学は習わない。習わないから医学を学ぶのがどんなに大変かもわからない。医学も学校で教えれば「自分には医学なんかわからないのだ」と言うことをわかると思うんだが、習ったことがないから「自分にはわからない」ことが分からない。だからズブの素人がネットのわけわからない情報を見て、「自分は医者より医学がわかってる」とか言い出す。

     

     

    あなた方(私も含め)は物理や数学、漢文などなどに関しては無知の知を持ってるんだから、医学についてももちなさい。

  • 投稿日時:2024/02/02

    人間関係に悩んでますという患者さんに私がよく持ち出すのが、この「正規分布曲線」ってやつです。正規分布曲線の統計学的意味とかは、この際関係ないです。私が患者さんにいうのは、人間であれなんであれ、一定数が集まって集団になると大体こういう分布になるんです、ということです。

     

    それで、このグラフに三本薄い縦の線が描かれていますね。向かって左側の線の左側は、あなたと気があう人々を表しています。集団全体の中でそんなに多くはないけれど、自然に気があう人たちというのが必ず一定数います。これは気があうんですから仲良くすればいい。


    左の縦線と右側の縦線の間は盛り上がってます。集団の中で一番多い、「どうでもいい人たち」です。誰にとっても集団の大多数は「どうでもいい」んです。この人たちとは、当たり障りなく接しましょう。若い子が得意な「そだねー」でいいんです。この多数派を敵に回すと人生かなり苦しいので、そだねーで摩擦を作らない。


    向かって右の縦線の右側。これはあなたとは根本的に「合わない」人たちを表します。集団の中には、この「自分とはどこかどうしても合わない、馴染めない」人々がいます。どんな集団にもいます。理解しなくてはならないことは、この人たちは「悪い人たち」ではないのです。無論あなたからみるとこの人々はあーでこーで、やな感じなのですが、それはあくまで「あなたから見て」です。他の人から見たらその人は気が合う人だったり、どーでもいい人だったりします。


    ともかく集団というのは大体こういうふうになります。そして、向かって右側の「どうしても合わない人」との接し方で疲れてしまう訳です。だからこういう人に対する態度は基本的に「無視」。関わり合わない。無論関わり合わないと言っても職場だったりご近所だったりすれば、最低限事務的に連絡事項を伝えるということはあります。ですがそれ以上に関係を持たない。事務連絡するだけ。どうせこの人々とあなたは、何をどうやっても合わないんです。だからこの人たちとなんとかうまくやろうと思うなんて、無駄です。関わり合わないこと。


    しかしですね、この「合わない人」が職場の上司だとか、同僚だというのなら、別の対処法もあります。上司が明らかにパワハラをやってくる。でも直属の上司だから「関わり合わない」ができない。しかしこういう例は社内にコンプライアンスを担当する部署がある場合もあるでしょうし、当院で診断書を書けば職場が取り合わなくても労基署や弁護士に診断書とパワハラの記録を持って相談するとどうにかできます。パワハラというのは実は暴行罪なんです。パワハラという意図違法ではないというイメージがありますが、精神的に障害を受けても暴行罪。それであなたが打つ状態だの心因反応だとと言った精神的な病気の状態になれば傷害罪です。罪に問えます。


    同僚の言動がいちいち癪に触るというのがパワハラかどうかというのは微妙になります。どうしても嫌で嫌でたまらない同僚がいるのであれば、職場に配置転換を希望してその人と離してもらうのが一番です。当院に相談してくださればこの患者が職場復帰するには特定の人物と引き離す必要があるので人事に特段のご配慮をお願いしたい、と言った診断書を書きます。


    でもご近所付き合いとかだと、嫌なお隣さんがいても「引っ越してくれ」とかなかなか言えない。そういう時はこのグラフを思い出せばいいんです。合わない人とは関わらない。

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